住職のお話し

13)この美しい仏事の心を伝えていただきたい

春慶寺住職

 お盆の季節が間近になってまいりました。先に逝かれたご先祖、愛する家族がお家に戻ってくると信じて仏壇を掃除し、しつらえをして13日の夕方を待ちます。迎え火、盆踊り、送り火、都心ではすっかり見られなくなった風景ですが、どなたも切なく思い出されるのではないでしょうか。現在の住宅事情では精霊棚を作ることは難しいかもしれませんが、それぞれのお宅が無理なくできるようにで構わないのです。次の世代に、できれば幼い人達にこの美しい仏事の心を伝えていただきたいと願ってやみません。
 2年前、戦時中多くの日本人が命を落としたモンゴルに慰霊に行く機会に恵まれました。つい最近父が戦時中、ハルピンからソ満国境に通じる鉄道の警備にあたっていたことを聞かせてくれました。これまで私に戦争体験を語ることはほとんどありませんでしたので、子供の頃一緒に風呂に入った父の体に銃痕があったこと、夜度々うなされて飛び起きたりしていたことから、その過酷な体験を察するばかりでした。あまりに多くの犠牲をはらって、今日の安全で平和な日本があることを感謝しつつ慰霊供養の経を手向けてまいりました。かつて世界の大半を手中に収めたモンゴルも、中国とソ連に占領され、片や中国領内モンゴル自治区となり、片や国名はモンゴルと残りましたが、民族の文字も宗教も禁じられてラマ教寺院はことごとく破壊され多くの僧が処刑されたのだそうです。誕生、成人、結婚、死、人生の節目節目をラマ教の慣習に従って暮らしていた人々は、心の支えを失い長い年月を過ごしました。今ようやく自由を取り戻し、中国領にわずかに残った老人から縦書きのモンゴル文字を習い、チベットに修行に出かけながら、老人の記憶を頼りにラマ教の伝統的な習慣を復活しようと模索しています。日本は戦争に敗れましたが、信仰、文化、習慣を他国から奪われずにすんだのです。そのことを肝に銘じて、迎え火に火をともそうではありませんか。

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東京・永代供養納骨堂の春慶寺Syunkei-ji Tokyo Japan